前回は、「来瑠未堂」という名前とロゴに込めた想いをご紹介しました。第4話では、来瑠未堂が主役に選んだ「くるみ」そのものに、少し目を向けてみたいと思います。

信州とくるみの、深い関係

信州は、くるみの一大産地として知られています。中でも東信地方は、古くからくるみ栽培が盛んなエリア。地域に根づいていた在来種のくるみに、後の時代に伝わった実の大きな品種が掛け合わされ、殻が薄く実の取りやすい「信濃くるみ」が生まれ、信州は全国有数のくるみ産地へと育っていきました。

りんごや栗とはまた違う魅力を持つくるみ。信州の山々に深く根を張り、長い時間をかけてこの土地に馴染んできたくるみだからこそ、これから新しい魅力を伝えられるのではないか。来瑠未堂はそう考え、くるみを選びました。素朴で、どこか懐かしい。それでいて、噛みしめるほどに深い味わいがある。そんなくるみの魅力を、お菓子を通じてお伝えできればと考えています。

くるみの産地 長野県東御市のくるみ畑
くるみの産地 長野県東御市のくるみ畑

一本では実らない、くるみの不思議

くるみには、ひとつ面白い性質があります。同じ木の雄花と雌花は同時に開花せず、離れた場所にある別の木の花粉を、風によって運んでもらうことで、ようやく実を結ぶのです。これは、より強い個体を次の世代に残すための、くるみなりの知恵だといわれています。

一本の木だけでは完結しない。誰かと結びついて、はじめて実りが生まれる。そんなくるみの性質は、長生堂とサンクゼール、そして善光寺門前という土地が出会って生まれた来瑠未堂の歩みとも、どこか重なるものがあります。

意外と知られていないくるみの花。4~5月、無数の緑色の花の集合体の雄花と、その上にちょこんとある雌花が開花。
意外と知られていないくるみの花。4~5月、無数の緑色の花の集合体の雄花と、その上にちょこんとある雌花が開花。

お土産に込めたストーリー

お土産は、ただ持ち帰るものではなく、訪れた場所の記憶を持ち帰るものでもあります。信州の山々で育まれ、風によって遠くの木と結ばれて実をつけるくるみ。その物語を、善光寺を訪れたひとときの記憶とともに、持ち帰っていただきたい。来瑠未堂は、そんな願いを込めて、くるみのお菓子をお届けしていきます。

受粉後の7~8月頃、緑色の外皮(果皮)に包まれた実はぐんぐん大きく育ちます。
受粉後の7~8月頃、緑色の外皮(果皮)に包まれた実はぐんぐん大きく育ちます。

次回、第5話では「試作は何度も失敗した。」―試作品を繰り返し改良した苦労話などをご紹介します。どうぞお楽しみに。